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稜線の藩境に祀られる神社 [狛犬・寺社(松本市)]

取材済み→記事なしネタの蔵出しが続きます。。。

松本市神田、千鹿頭神社。
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住所表記で里山辺とされている情報も見られるのは
両者の地区境になっている千鹿頭山の尾根沿いが境内になっているため。
そして境内の入口は両地区にありまして、自分は今回神田側から参詣。
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朱塗りの鳥居をくぐると社務所の脇を抜ける、
参道というよりハイキングコースみたいな道が続きます。
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一汗かきながら稜線まで登ると、社殿が見えてきました。
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その手前に聳え立つ2本の柱は御柱。
境内の由緒書きによれば諏訪信仰と縁のある千鹿頭大神を祀り、
御柱祭りは卯年と酉年に執り行われるとのこと。
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ふたつの社殿が並立しています。
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もともとひとつの社殿で奉じられていた同社でしたが、
江戸初期の元和4年(1618)に山の稜線を境にして
神田側を高遠藩領、反対側を従前の松本藩領と分割されたことにより、
それぞれの側で社殿を持つことになったのでした。

現在の神田側(旧高遠藩)の社殿は正徳5年(1715)に、
林&大嵩側(旧松本藩領)の社殿は元文5年(1740)に、それぞれ建築。
両社殿ともに現在では市の有形文化財に指定されています。

ともに一間社流造で一見同じようなデザインですが、
向拝など細かな部位の装飾など相違が見られて興味深いです。
よく見ると注連縄の吊るし方も微妙に違っているように見えます。

拝殿も両藩ごとに設けられていて、茅葺と銅板葺の二種類。
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御柱は当然ながら本殿背後にも二柱が立っています。
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境内の本殿際や稜線上の離れた場所に立つ摂末社。
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そしてお目当ての狛犬は本殿前に一対。
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寛政7年(1795)7月建立。
18世紀末の作品ともなれば松本市内ではかなり古い部類に属します。
自分が知っている松本市内で年代の銘がある最古の狛犬は
女鳥羽川沿いに立つ亘理神社の明和6年(1769)年になるのですが、
その狛犬とはどことなくデザインに似通った印象を受けます。
建立年の差が四半世紀というのは同一作者の可能性も否定できませんが、
仮に異なる石工の作であったとしても、まだこの地方で狛犬の存在が
ほとんどない状態であることを考えると、亘理神社の子達を
参考に制作されたという可能性も十分あり得るところだと考えられます。
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両狛犬たちの共通性はそのようにいくつか考えられるとして、
一方で大きく異なるのは阿吽が通常と左右反対に据えられていること。
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なにゆえ阿吽の配置をこうしたのか不明ですが、
もともと縦置きだったのでしょうかね?

そしてそれよりも気になるのが置かれている環境。
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これも玉垣と言っちゃっていいものかどうだか。
コンクリートの塀の間際に据えられているため、
正面からは体の下半分ほどが隠れてしまって見えない状態で、非常に具合が悪い。
本殿も文化財指定を受けるほどの貴重な存在で、
稜線で分かれた藩境に本殿が二社並び立つ貴重な文化遺産なのに、
塀がこれではいただけないなと。
まあ、ブロック塀にしたことには理由があるのかもしれませんが、
それにしてもちょっと、ね。

とまあ狛犬の環境にやや不満がありつつも、
少し歩いた先にある展望台から望む景色は最高で良かったです。
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松本市街地と背景の北アルプスの様子は汗をかきながら登拝するだけの
価値はありますね。

(取材日:2013年3月9日)




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