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国内最古(?)の石造狛犬はお寺にあり [狛犬・寺社(奈良県)]

タイトルの国内最古に?マークをつけているのは
ひとえにそれが100%断言できるものではないということもありますが、
純然たる国産狛犬ではないよ、という意味合いも幾らか込められているためで。

奈良県奈良市、東大寺。日本が世界に誇る名刹。
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一般的に言って狛犬というと神社と相場が決まっているように思われがちですが、
お寺に据えられているのも決して珍しいわけではありません。

その代表格なのがこの東大寺南大門の狛犬。
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建久7年(1196)建立。
記銘のある石造狛犬としては国内最古といわれており、
国の重要文化財指定を受けています。

古代に大陸から伝わった守護獣としての獅子が発展し、
日本独自の獅子狛犬の形態が確立。
しばらくは宮中や朝廷に所縁の深い寺社の神殿などのみに置かれていた、
いわゆる“神殿狛犬”のみの時代が続きましたが、
やがて神殿の奥から縁側へ、そして参道へとその位置を移動させ、
木造が主流だったそれまでから屋外の風雨に耐えられるようにと
石造りによって発展を続けることになりました。

しかしこの東大寺の狛犬を制作したのは中国=宋の国の石工で、
石材も宋から輸入された外材を用いています。
デザインも獅子狛犬という日本独自の形態ではなく
まさに中国獅子のデザインのそれです。
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この点からこれを国産最古の石造狛犬とすることに
疑問を呈する人もいますが、まあ作り手と材料が外国の人と物だとしても、
“国内で作られた”という括りは間違いではないですしね。
あまり細かいことは気にしないようにしましょう。
(東大寺ではこれを狛犬ではなく獅子像として紹介しているので、
ここでもその解説に倣って以下、獅子(像)と表記します。)

この獅子像は国内最古という肩書きを持つこともあってか、
後世に全国各地の神社でこれを模倣した狛犬が制作されました。
とくにその尊大な(?)態度から、国威発揚的に作られることも少なくなく、
狛犬家の間では護国神社型=招魂社系の一類型として括られたりしています。

それにしても、、、この獅子像はちょっと不遇といっていい状況。
超有名な東大寺の、有名な南大門の、さらに有名な仁王像の立つ、
その真裏(北)側に据えられているのですが、殆どの参拝客(観光客)は
この獅子像に見向きもしません。
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国重文指定を受けているといっても、こんなもんです。
(かくいう私も、狛犬の道にのめり込む前は存在すら知りませんでしたが。。。)

仁王像との位置関係は、こんな感じ。
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おまけに周囲が金網に囲まれているため、写真の撮りにくいことといったら。

それでもなんとか網に焦点を合わせることなく、隙間から頑張って撮ってみました。
2体とも口を大きく開き、ぐっと胸を反らせ、首には鈴飾りのベルトを巻いているなど、
いかにも中国獅子のデザイン。
台座も須弥座となっていて、周囲に浮き彫りが施されています。
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純粋な狛犬のスタイルとは異なりますが、
いろんな意味で後世の狛犬制作に影響を及ぼした大作です。
みなさんもこれからもし東大寺を訪問する機会があれば、
仁王さまだけでなくぜひこの中国獅子の一対もしっかり鑑賞してみてください。
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(撮影日:2012年10月9日)


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