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お寺の狛犬の代表格 [狛犬・寺社(東京都)]

東京都目黒区下目黒、目黒不動尊。
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天台宗、泰叡山瀧泉寺が正式名称。
一般に目黒不動として親しまれている、
関東最古の不動尊霊場というこの地ですが、
ここに東京最古といわれる石造参道狛犬がいるという話で、
6月の東京取材ツアーのトリを飾るべく、やって来ました。

東急目黒線不動前駅下車、徒歩、、、なから15分ほど。
お寺なので隋神門ではなく、もちろん仁王門。

仁王門前にさっそく一対の狛犬がいます。
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が、平成11年奉献の子達は、今回はスルー。

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門の両脇に仁王様がいますが、その後ろ、
仁王に背を向ける格好で石膏の狛犬が一対います。
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東大寺南大門の仁王と狛犬の配置そっくりですね。
2013年2月19日のエントリー記事

原型制作者:後藤良(なおし)。
狛犬の情報サイト「狛犬の杜」にある情報を要約すると、
じつはこれ、もとは靖国神社に奉納される狛犬の原型として
大東亜戦争中に陸軍省が後藤氏に制作依頼して作られたものとのこと。
後藤氏は純国産最古の石造狛犬と誉れも高い(?)京都の籠神社の狛犬を
モデルとして制作をスタートさせ、石膏像による原型まで完成させました。
原型をもとに石造作業が始まったのですが、戦争も終結して計画は頓挫。
その後、戦後社会も落ち着き、靖国神社の狛犬制作は改めて制作再開。
後を受けた八柳恭次が完成させ、昭和41年に奉献が実現。
それが少し前のエントリーに掲載した参道入口にいる籠神社型狛犬です。

原型としての石膏像はその後居場所を転々としていましたが、
後藤氏の孫である彫刻家安原氏がこれを引き取り破損箇所を修復後、
依頼を受けたのちに目黒不動尊に奉献されることになったそうです。
時は昭和53年(1978)7月。

なので、靖国神社と目黒不動尊にいるこの狛犬は、
まぎれもなく同じ親(=後藤良氏)から生まれた子達ということになります。
もっとも、両者の誕生の経緯はともかく、そのオリジナルモデルが
京都の籠神社の狛犬であることに変わりはないですが。

参道を歩くとすぐ山犬の一対が待っています。
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文久2壬戌(1862)正月建立。

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親子の姿がなんとも和み系ファミリーでいいですね。
阿形の腹部に小さな突起が幾つか見られることから、
おそらくこちらが母親ではなかろうかと思われます。
陰部に男女の象徴(とくに男の子の、、、)が彫られることは
狛犬の世界では時折見かけますが、
乳首によって母親を明確に示す彫りは比較的珍しいと思います。
自分が見た中では、福島県石川町の石都々古和気神社の狛犬くらいですね。
2012年9月18日のエントリー記事

山犬は参道石段の上り口にもいますが、
こちらは阿吽ではなく一セットの親子でまとめられています。
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目黒不動尊の象徴でもある、独鈷の滝と池。
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池と水掛不動の背後にある斜面には石仏などがずらり。
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その石仏に混じって山犬や狛犬の姿もたくさん見受けられます。
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下から眺めているとよく分からなかったのですが、
石段途中から見ると、この子は頭部が切断されていたのだということが
よく分かります。

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石段を上がりきると本堂がずんと目に飛び込んできますが、
そのまえ石段上がりきりの両サイドにいる一対。
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承応3年(1654)建立。
これが現在、東京最古といわれている石造参道狛犬一対です。
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胸元に年号などが記されているのが、はじめちゃんによく見られる光景。
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とくに地方ではまだまだ素朴なデザインのものがおおい年代の作品と考えると、
年代の古さのわりにはかなり凝ったデザインなので、ちょっと驚きです。

本殿向かって左奥、八大童子の山の前にいる狛犬。
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手前に柵があって近寄れなくなってましたが、
岡崎現代型なので、まあいいかと。。。

それより本殿向かって右、微笑観音菩薩の側にいる子に興味が惹かれました。
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天保11(1840)庚子年11月建立。
江戸狛犬の典型的デザインですが、
ここでは本体よりも台座のレリーフが秀逸。
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獅子の子供と牡丹でしょうか。
やんちゃっぽい子供が牡丹の花畑で遊んでいる様子が細かく描かれています。

そしてその下段では山犬の子供たちが無邪気に遊んでいる姿が。
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なんとも微笑ましさを感じる彫り物が素晴らしいのですが、
残念ながら後背部が大きく欠損しており、なんらかの事情(震災?)などで
一度倒壊してしまったのかなと思われます。
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そしてこの狛犬は一体のみで、
近年になって吽形のほうが再建されたのですが、、、
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現存した阿形と比較して、あまりのギャップに言葉を失い。。。
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台座は先代の吽形が乗せられていたものでしょう。
阿形のそれと対になっていますが、こちらはレリーフもほぼ失われています。
一対できれいに保存されていれば、非常に優れた作品として
高い評価を受けていたのではないでしょうか。

石段を下り、独鈷の滝の背後に回ると、前不動堂があり、
その前にも山犬が一対鎮座していました。
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おとなしそうな、素朴な子達です。
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今回、目黒不動尊は初めて訪れました。
東京でも有名な不動尊として、正月の初詣客も
けっこうな人出になるそうですね。

田舎者の自分には目黒って山の手の住宅街というイメージでしたが、
適度な坂道も多く、下町の雰囲気も感じる庶民的な商店もけっこう見かけて、
自分の波長に合いそうな町並みが気に入りました。

目黒不動尊HP

(撮影日:2013年6月16日)


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