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火の見やぐら遺跡、三たび・・・ [火の見櫓(安曇野市)]

木造(またはごく一部の鉄骨造でも)の柱を用いた火の見やぐらの場合、
その柱脚部を石柱の基礎で固定するということがかつては一般的だったようで、
その石の台柱のみが遺構として残されている様子を過去に2回取り上げました。

取り残された火の見やぐらの台柱
安曇野に残る火の見やぐらの遺跡

そして、、、今日、三度目の取材記事となる石造の台柱を発見してしまいました。
2015.03.23.1.JPG
安曇野市穂高柏原、松下地区。

堀金烏川の扇町地区と境を接する同地区の一角、
交差点の片隅にトライアングルに立てられた3本柱が残されていました。

台柱それぞれに文字が見られます。
「大正九年十二月建(設?)」
「柏矢町消防(組?)」
「西穂高村警防団」
2015.03.23.2.JPG
2015.03.23.3.JPG
2015.03.23.4.JPG

足元にあるのは道祖神なのだろうか? 字が読みづらい。
2015.03.23.5.JPG

大町市美麻の木造火の見やぐらの台柱にある年代は大正15年。
それより遡ること6年前に建てられている計算になります。

柏矢町は大糸線柏矢町駅付近の地区名で、この場所から少し離れた場所になりまますが、
消防組の組織は柏矢町の名称でこの地区は活動していたのでしょうかね。

西穂高村は現在の穂高柏原と穂高牧の両地域にあたり、明治22年発足以降
昭和29年に周辺地域と合併して穂高町となるまで存続していた自治体です。
警防団は昭和14年に国の法令によって発足した自警団体で、
消防組はその前身にあたる組織です。
大正9年の銘文が建設年だとすれば、当時は消防組の名前だけだったところに
昭和14年以降になってあとから警防団の名前が空白だった残り一本に刻まれた
というふうに考えることができますが、事実はさてどうなのでしょう。

ところで、、、
今年に入って牧地区の荒神堂に残されていた火の見やぐらの台柱を目にするまで
火の見ヤグラーの自分としてもこうした遺構に目が向くことはありませんでしたが、
一度気になり始めると意識がそちらに向いてしまうというのは、
やぐら自体を発見するのと同じ感覚が機能しているのでしょう。

この台柱のある道路もしょっちゅうではないにせよ、過去に幾度も車で走り抜けている道です。
こうして気になりだすとここ2ヶ月ほどの間に3箇所で発見してしまうということですから、
案外こうした遺構は各所にまだ残されているのかもしれません。
安曇野以外の地域へ出かけたときも、ちょっと気を配ってみれば、あるいは・・・。

それにしても、こうしてやぐら本体を失った台柱がどうしていまだに残されているのか。
別の言い方をすれば、なにゆえやぐら撤去に合わせて台柱を取り除かなかったのか。

このような石の台柱を持つ木造の火の見やぐらは少なくなかったと思います。
(鉄骨造の可能性も無きにしも非ずではあるけれど。)
けっして往来の邪魔とかそういうわけではないですが、
道路整備の一環などで撤去されていても不思議ではなかったはず。
それでも残されていたのにはなにかそれなりの理由があったのか。

大町市美麻新行の火の見やぐらについて、地域住民の方は
「昔の大火のあとに立てられた防災記念碑」の意味を持っていると語っていました。
今回発見した松下地区の台柱や先に見つけた2地区のものに
そのような意味が込められていたかどうかはわかりません。
そこまでの意味がなく、たまたま取り除く手間をかけなかっただけというほうが
納得ができそうな感じもしています。

ただ、大正9年以来の地区の安全を見守ってきた火の見やぐらの一部として
地域住民があえて記念碑の意味を込めて残したとしても不思議ではないかも。
このあたりの経緯はもちろん現地で聞き取り調査などすべきところではありますが、
さしあたりそのように勝手ながら思わせてもらうことにします。

道路向かいでは地域住民をずっと守り続けきたであろう道祖神や石碑たちが
しっかりとした造りの覆い屋のなかで大切にされていました。
2015.03.23.6.JPG

あるいはあと100年も経てば、こうした火の見やぐらの台柱たちも
100年後の石造文化財研究家たちによって地域の伝統文化を検証する材料として
大事に保護されるような時代に変化していくのでしょうか。
2015.03.23.7.JPG

(取材日:2015年3月23日)



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